石井栄子さん
学生時代に「キャリアウーマン」という言葉が流行していたことから、「仕事を持ってバリバリ働く女性」があこがれだったという石井さん。やりがいを求めて仕事を転々とし、20代後半でたどり着いた専門商社では、情報誌やWebメディアの制作に携わった。
当時は、結婚・出産後も働いている女性は皆無に等しく、将来のライフプランをどう描けばいいのか悩んでいたという。30歳に結婚、31歳で第一子を出産し、退職。その後1年も経たないうちに「働きたい」思いが芽生え再就職を試みるが、よい出会いには恵まれなかった。
もともと書くことが好きだったこと、専業主婦時代にフリーライターの書いた本を読んだことがきっかけで「ライターになろう」と決意。経験はなく全くの素人だったが、1本の企画書(タイトルは「SOHOがママの働き方を変える」)と原稿を携えて出版社に売り込みに行った。はじめは「こんな企画、売れるはずがない」と追い返されたが、しばらくして、「やりましょう」という連絡を受け、ライターとしてのスタートを切った。
「最初は、打ち合わせに行く交通費にも事欠く日々でした」(石井さん)。しかし、丁寧な仕事の積み重ねで少しずつ仕事が増えていった。最初の売り込み以外、ほとんどが人づてで仕事が舞い込んできた。手がけた出版企画で、ベストセラーを出したこともあり、ライターにとどまらず、仕事の幅も収入も着々と増えていった。現在は、雑誌や単行本の企画・編集、記事の取材、執筆。企業の広報誌やWebサイトの記事制作。また、自治体等からの依頼で編集講座の講師を務めることもあるとか。
自営型テレワーカーとして24年のキャリアを積みながら、3人の子どもを育てあげた石井さん。「会社員だったら、子どもを3人も産もうとは思わなかった」と振り返る。「自営型テレワーカーだからこそ、自分の都合で仕事のスケジューリングができた。雇用されている立場だったら、子どものせいで仕事に穴をあけるストレスに耐えられなかったと思う」と話す。
よかったこと自分の都合で仕事のスケジューリングができること。
困ったこと仕事が楽しすぎて、ついついオーバーワークになってしまうこと。
「絶対に守っていることは、納期の3日前には仕事を仕上げることです。子どもや自分に不測の事態が起きて仕事ができなくても3日あれば挽回できますから」と、石井さんは話す。業務においては相手の期待値の120%の仕事をすることを心がけ、未知の仕事やできるかどうか不安に思うような仕事でも「はい、やります!」と元気に答えているのだとか。「できるかどうかはあとから考えればいい。今の自分にできなくても、仕事が自分を育ててくれるから」(石井さん)。
40代半ばの頃、「このままでは仕事と子育てしかない人生になってしまう」と悩んだことも。しかし、「仕事と子育てが趣味だと思えばいい」と開き直ったという。今は、3人の子どもも独り立ちし、ようやく仕事と子育て以外の趣味を探しだした。週末は、ボルダリング、登山、ヒップホップダンス、英語の勉強、家庭菜園と忙しい。
石井さんは今後も、自営型テレワーカーとして働き続けたいという。「気がついたら私も還暦が見えてきました。今は、先輩たちから学びながらこれからの働き方を模索中です。後輩の自営型テレワーカーたちのためにも、よいロールモデルとなりたいですね」と話す。書くことが好きで始めたライター業だが、取材で日々新しい人に会うことも大きな楽しみだという。フリーランスを謳歌する石井さん。その背中を追う後輩も多い。
自営型テレワークの仕事例
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