通常、まず電話で仕事の依頼をいただき、「いついつまでにお願いします」という話になってから仕事をもらう。よくあるパターンでは、仕事が終わった後に、報酬金額の提示にようやくとりかかる。
その時点になると、クライアントからは、「予算がこうなのでこれでお願いします」と言われてしまう。「次回どこかで帳尻を合わせますので」などと言われたり、駆け引きのしようがない。結局、帳尻を合わせてくれたことはないが、次回の金額提示の時に少し配慮をしてもらってはいる。こちらから金額の提示をすることはなく、受身の形だ。最初から見積りを出している暇がない。
翻訳の相場の金額は基本的に字数換算だが、だいたい一括でいくらという感じ。レイアウトが伴う場合などは、その部分を時間換算でもらう。発注する側がだいたいこうだろうと金額を提示してくるので、こちらの意向と食い違う。先方が専門外であったりすると、仕事の中身を知らないことが、ときに裏目に出たり、良い方向に出たりする。
また、実際に仕事を請けてから、内容を確認してみて初めて、自分がイメージしていたものと違い、納期が守れないこともしばしばある。私の見通しが甘いのだろうが、発注側もどのくらい大変な業務なのか理解していないのではないか。気をつけてはいるが、このような納期遅れの対処をすることは月に1度以上はある。
ある時は、納期遅れということで、金額は半減(22万円→12万円)を言い渡されたが、こちらに非があったので受け入れた。
受注金額や業務内容、納期の設定について何か問題があった場合、早いうちに調整の打診をもらえれば、あとで納期遅れや報酬金額のトラブルにならなくて済みます。結果的に納期を破ったりされると、当方の後工程に影響するし、こちらが進捗管理をしなければならないような状況に陥り、非常に困ります。
受注価格の交渉は、自分の報酬単価の設定の上でも非常に重要です。仕事の後になって報酬の交渉を始めたり、仕事の中身を先方が知らないからといって、高い金額を請求したりすると、長期的な取引関係は望めなくなってしまうこともあります。
先方が仕事の内容を理解していないと感じたら、手間を惜しまず可能な限りサンプルなどを提示して、金額の目安を伝える余裕を持ちましょう。これによって無理な受注を防ぎ、納期遅れを防ぐことにもつながり、あなた自身のリスク管理にもつながります。積極的に自分からアピールし、信頼関係を積み重ねていきましょう。
万が一のトラブルに備えて、見積書や契約書などの書類を作成しておきましょう。
クライアントからSOHOへ仕事の打診があった時にまず必要なのは、見積書です。「だいたいこの金額で」と言われるがままに請け負って、いざ仕事をスタートさせてみると大変手間取ってしまい、「とてもとてもこの金額ではやってられない!」と、後悔してしまうことがないようにしたいものです。内容をきちんと把握した上で、すみやかに提出しましょう。
SOHOの請負業務の多くは、電話やメールによる口約束ですが、仕事を請け負うことが決まったら、クライアントと契約書を交わすことが理想的です。相手が契約書を作成したがらない場合は、「発注請書」を作成するなどして、請け負った内容を双方で共有するよう心がけましょう。
SOHO受発注トラブル事例集
第1章「自らの落ち度の度合いが高い場合」
第2章「先方の落ち度の度合いが高い場合」
第3章「自らの強みを単体で生かしている場合」
第4章「自らの強みをコラボレーションで生かしている場合」
付録「SOHO受発注トラブル事例集FAQ」
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