トラブル事例(5)
発注先との行き違い・報酬額トラブル

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第2章先方の落ち度の度合いが高い場合

事例5:発注先との行き違い・報酬額トラブル

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プロフィール
SE(システムエンジニア)として2年間ソフトウエア会社に勤務。退職後、半年間充電。別のソフトウエア会社に勤務後、数年間の休業期間を経て、フリーで仕事を始めて8年。就業時間は週に40時間で、年収は400万円。

通常は地元企業から受注をしているが、あるとき仕事が切れた。そこで各種エージェントに登録はしてあったので、メーリングリストを注意してみていると、アクセスVBAの管理業務のシステムを作れる人を募集している案件を見つけた。応募をしたらすぐに電話がかかってきて、「お願いします」ということだった。前からそのエージェントに登録はしてあったが、仕事をもらうのは初めてだった。デモ画面何月何日、最終納期何月何日との連絡を受けた。私はそれで、「本開発に入る前のデモ画面を作るんだな」と認識し、実際に作業を始めた。

私は、次の週ぐらいに別の仕事が入りそうだったことと、ちょうど発注から1週間目の月曜日に、発注元が客先で打ち合わせがあるということを聞いて、それに間に合わせてあげようと思ったこともあり、2週間でつくってくれ、というのを突貫工事で1週間でつくった。そして納品指示に従い、ソースを送った。

客先と打ち合わせをすると言っていた月曜日の次の日ぐらいに、発注元から電話がかかってきた。結局案件をとれなかったので、「今までの作業分は工数計算で請求を出すように」と言ってきた。さらに、「当初提示していた分よりも少なめの工数計算の額で」とのことだった。私としては、「報酬設定が少しおかしいのでは。2週間でいいところを1週間で仕上げ、望むものをすべてやったのだから」と答えた。

私の解釈では、最初からその案件がとれていて、デモ画面を作ってから本開発に移るという位置づけだと思っていた。だから発注された時の最終納品はデモ画面の完成のことを言っていると思った。ところが発注元は案件が取れれば、後半でデモ画面からシステム全体を作るつもりだった、と言う。だから当初の工数よりも少ない額で、と言ってきたようだ。

結局報酬は当初予定していた請求額の3分の2になったが、それでいいことにした。向こうには向こうの言い分があると思うからだ。最初にどこまでやるのかもう少し詳しく聞けばよかった。私は発注時点で工程と報酬に対する思い込みがあったから、それを聞くこともしなかった。やはり会うにこしたことはないと思う。

発注者の視点

発注者

とにかく急いで受注してくれる方を探していたので、こちらの都合でいろいろとお願いしてしまったかもしれません。しかし報酬額については、こちらが当初からお願いしていた納期より早く作業をしていただいたようですが、早く出すようにとは特にお願いしておりませんし、当初から工数計算で想定していた案件でした。

双方の意識統一を心がけよう

システム開発の場合、クライアントの担当者から全ての業務フローを聞いてから、要求に添った仕様を作成し、工数、見積書を提出し、金額の合意を得てから業務にかかるのが定石です。 その後、詳細の打ち合わせ、設計に入るわけですが、実際にシステムの詳細内容をひもとくと、見積工数と業務依頼が大きくかけはなれている場合もあります。このような事態が生じる原因の一つには、仕様の詰めの甘さがあります。業務を理解できないシステムエンジニアと理解したと思う発注側の意識のずれがこれを生んでしまうのです。

また打ち合わせ時点では、クライアント側もシステムエンジニアに完全に業務を理解させることは非常に難しいです。現場に入り一緒に仕事をすればITスキルがあるので、どうあるべきかを考えるのは非常に早いですが、それがないメールだけの打ち合わせの場合はなかなかお互いの意識のずれを埋めにくい場合もあります。

お互いがずれた認識のまま進んでいく原因は基本的な目標があいまいなことも関連します。目標が掲げてあれば、ずれも少ないので、早期に確認が必要です。

先輩SOHOに聞く

先輩SOHO

クライアントに直接会うことがなく、メールに限って仕事をしなければならない場合、繰り返しになりますが、業務フロー・確認ツールを設定してくことが大切です。特に初めての発注元とのやり取りでは、自分としては当然、と思っていることが相手には共有されていない、ということもあるので、注意が必要です。

クライアントとのコミュニケーション

また、通信手段が便利になった現在においても、やはりフェース・トゥ・フェースでの打ち合わせをすることも時としては必要です。受注案件に直接関係する情報以外の、発注元に関する様々な情報が把握できるからです。

人間関係を構築していくために
  • 初めてのクライアントとは、最初は小さな取引から始め、お互いに信頼関係を築きながら徐々に大きな取引へと移行できるようにしましょう。そうすればリスクを回避することにつながります。
  • どこで何を確認するかを見極めること。口約束だけだとあいまいなことは、必ずメールや書面で残しておくよう心がけましょう。特に正式な依頼を受けた時は、「発注請書」を作成して、相手に捺印・確認してもらうことも、お互いの業務への確認となります。
  • 自分の力量や環境を見極め、納期、スキル、報酬条件的にできないことは、請けないほうが無難です。無理をして請けてみたものの、結局は相手が期待したような成果が出せない場合は、信頼関係を失うことになりかねません。時には断る勇気を持つことも必要です。

SOHO受発注トラブル事例集

第1章「自らの落ち度の度合いが高い場合」

第2章「先方の落ち度の度合いが高い場合」

第3章「自らの強みを単体で生かしている場合」

第4章「自らの強みをコラボレーションで生かしている場合」

付録「SOHO受発注トラブル事例集FAQ」

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