民法
- 民法で定められている契約には様々なものがありますが、自営型テレワークに関係が深いものは、請負契約と準委任契約です。
- 請負契約は、仕事の完成を目的としており、自営型テレワーカー自らが仕事を調整して、その責任で完成に努めます。
- 請負人には仕事を完成させる義務があります。もし、仕事の完成前に請負人の責任でない災害等が起こって、仕事を最初からやり直さなければならなくなっても、請負人は原則として余計にかかった費用を請求することができません。
- 成果物が不完全なものであれば、発注者から不完全な点の補修や損害賠償を求められます。成果物が契約の目的を達成できないほど不完全であれば、契約を解除されることもあります。
- 準委任契約は、は、当事者の一方が事務行為をすることを相手方に委託し、相手方が承諾することによる契約です。
- 当事者はいつでも契約を解除できますが、相手方に不利な時期に委任を解除したときは、相手方の損害を賠償しなければなりません。
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下請法
下請取引の公正化、下請事業者の利益を保護することを目的としています
- 下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、委託者である法人事業者(同法で「親事業者」と定義)と、受託者である法人又は個人事業者(同法で「下請事業者」と定義)における資本金又は出資金の総額の区分、対象となる取引の内容(以下の①~④)、これらの法的要件に該当する取引に適用されます。
- 対象となる取引は、(1) 製造委託 (2) 修理委託 (3) 情報成果物作成委託 (4) 役務提供委託です。
- 自営型テレワークと関係が深いのは、情報成果物作成委託と役務提供委託です。
情報成果物作成委託とは、ソフトウエア、映像コンテンツ、各種デザイン等、情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することです。
役務提供委託とは、例えば情報サービス事業者が、顧客から請け負うデータ入力作業を他の事業者に委託する場合等、各種サービスの提供を行う事業者が、請け負った仕事を他の事業者に委託することです。
- 親事業者が次の行為をすることは禁止されています。
- 買いたたき
- 親事業者が、発注する物品、役務等に通常支払われる対価に比べ、著しく低い下請代金を不当に定めること
- 下請代金の減額
- 親事業者が、下請事業者に責任がないのに、発注時に決めた金額から一定額(一定率)を減額して支払うこと
- 下請代金の支払遅延
- 親事業者が、物品等を受け取った日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日。)から60日以内で定めなければならない支払日までに下請代金を支払わないこと) など
消費者契約法
「消費者」と「事業者」との間で締結される契約について、契約の取消し及び契約条項の無効等を定めています
- 消費者と事業者との間で締結される契約が対象となります。「消費者」とは、個人をいいます。ただし、個人の場合でも、「事業として又は事業のために契約当事者となる場合」は「事業者」となり消費者契約法の対象となりません。
しかしながら、自営型テレワークと称していても、注文者と自営型テレワーカーとの間に、契約の目的となる、成果物の作成や役務の提供(請負や準委任の業務)の実体が存在せず、自営型テレワークのために必要として、材料や機械を購入させることが契約の主な目的であるというものや、実質上は労働契約に付随して材料や機械を購入させる契約といえるものがあり得ます。
個別具体の事案にはよりますが、このような場合は、「事業のため」の契約ではなく、自営型テレワーカーは「消費者」として事業者である「注文者」との契約をしていることとなり、消費者契約法の対象となり得ます。
- 事業者の不当な勧誘で消費者が、重要事項について誤認し、又は困惑して契約した場合等は、契約を取り消すことができます。
また、消費者の利益を不当に害する契約条項は無効となります。
特定商取引法
消費者トラブルが起こりやすい取引を対象に、事業者が守るべきルールと消費者を守るためのルールを定めています
- 対象となる取引は、(1) 訪問販売 (2) 通信販売 (3) 電話勧誘販売 (4) 連鎖販売取引 (5) 特定継続的役務提供 (6) 業務提供誘引販売取引 (7)訪問購入です。
- 自営型テレワークと関係が深いのは、業務提供誘引販売取引です。「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘い、仕事に必要であるとして、商品を販売したりサービスを提供して金銭を負担させる取引のことです。
- 業務提供誘引販売取引の場合、消費者を守るためのルールとして、以下のものがあります。
- クーリング・オフ制度
- 消費者が契約した場合、法律で定める書面を受け取った日から20日間以内であれば、消費者は、事業者に対して、書面により契約を解除することができます。
- 取消制度
- 事業者が、契約を結ぶよう勧誘する際にうそを言って、消費者がそのうそを信じて契約した場合等は、契約を取り消すことができます。 など
家内労働法
家内労働者の労働条件の向上と生活の安定のため、委託条件の明示や工賃の支払いの確保等について定めています
- 在宅での働き方のうち、製造・加工業者等から物品の提供を受けて、物の製造、加工等をする方を家内労働者といいます。※自営型テレワーカーは、基本的には家内労働者に該当しません。
- なお、原稿に従って入力作業を行い、製造・加工業者等から提供を受けた外部記憶媒体(CD-R/CD-RW など)に保存し納品する作業は家内労働法の「加工」に該当し、家内労働法が適用されます。
所得税法
特定の所得の支払の際に支払者が所得税等を徴収して納付する源泉徴収制度について定めています
- 所得税法は、個人の方の所得税の申告や源泉徴収に関する事項などについて定めていますが、自営型テレワークに特に関係が深いものは、源泉徴収制度です。
- 源泉徴収制度とは、特定の所得の支払の際に、支払者が所得税及び復興特別所得税を徴収して納付する制度のことをいいます。
- 自営型テレワーカーに対して、特定の所得(原稿料や書籍の挿絵の料金など)を支払う注文者は、その支払の際に、所定の方法により所得税及び復興特別所得税の額を計算し、その支払金額からその所得税及び復興特別所得税の額を差し引いて国に納付しなければならない場合があります。
- 詳しくは、国税庁ホームページの「源泉徴収義務者の方」に掲載している「源泉徴収のあらまし」や「源泉徴収のしかた」をご覧ください。
フリーランス・事業者間取引適正化等法(令和6年11月施行)
個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、フリーランスと発注事業者の間の取引適正化及びフリーランスの就業環境整備を図るためのルールを定めています。
この法律は令和5年5月12日に公布され、令和6年11月に施行します。
- この法律では、法律が適用されるフリーランスを「業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないもの(特定受託事業者)」、発注事業者を「フリーランスに業務委託をする事業者であって従業員を使用するもの(特定業務委託事業者)」と定義しています。
- 自営型テレワーカーと注文者が、それぞれ、上記の「特定受託事業者」と「特定業務委託事業者」に該当する場合、この法律が適用されます。
- 具体的には、注文者に対し、自営型テレワーカーに仕事の注文をした際の取引条件の明示、成果
物等の受領から原則 60 日以内での報酬の支払いが義務付けられるとともに、受領拒否や報酬減
額等が禁止されます。
- また、育児介護等との両立への配慮やハラスメント対策のための相談体制の整備等が義務付けられます。
- 詳しくは、当省及び関係省庁のホームページに掲載している法律の概要や説明資料、Q&A をご覧ください。