トラブル事例(6)
不払いへの対応

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第2章自らの強みを単体で生かしている場合

事例6:不払いへの対応

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プロフィール
デザイナー。雑誌やパンフレットなどの制作が主体。場合によっては企画から、写真撮影・原稿執筆・編集までをこなす。SOHO歴は約8年で、年収は600万円。

あるエージェントから、企画コンペに出品するための広告のデザインを発注された。コンペに参加するにあたって、報酬面に関しては「支払いますが、金額に関してはまだ確定してません」という話があった。何度か仕事をしているエージェントだった。

そこで、指定された納期どおりに納品し、コンペの結果を待っていた。とりあえずコンペを勝ち取るのが最優先、と理解し、まずは納品することに注力した。その後、報酬面の話を具体的に始めようと思っていた。ところが、コンペの開催日から数日してもエージェントから連絡がこない。心配になって電話をしたところ、「コンペ自体が中止になった」との返事。とはいえ、コンペのためにデザインをしたことは事実なのだから、制作料は請求できると思い、「デザインの制作料はどうなるのでしょうか」と聞いたところ、「コンペ自体がなくなったので、制作料は払えません、すみませんが」と言われた。

考えてみると、極端な話、そのコンペがあったかどうかも分からない。例えば、その後、私の作品がエージェントによって、流用されてしまう恐れもある。それが発覚しても、エージェントから「これはうちで作りました。偶然似ていたんですよ」といわれたら、自分としては手の打ちようがない。コンペ用のデザイン制作料について、事前に確認しておけばよかった、と反省している。しかしコンペに通るかどうかもわからないのに、その段階で、報酬面の話をとやかく持ち出すのもどうかと思っていた。

独立当初はなるべく書類で、少なくとも見積書等は交わすようにしていたが、現実はどうかというと、口約束がほとんど。デザインの現場には割とこのようなケースが多い。他の案件でも、通常の受発注において、受注量が最初の発注内容に加えて、後付けで倍になっても、報酬は据え置きされるなど、不当な仕事量の上乗せや、事実上の単価の不当な引き下げを経験した。

このような経験から、やはり受発注のしかるべきタイミングで、確認すべき点は落とさないようにすることが重要だと思えてきた。だからなるべく、メールを交わして受発注内容を残すようにしている。

契約書自体を書きたがらないところも少なくない。「うちは書かないから」とはっきり言われることもあるが、契約を渋るようなところからは仕事を請けないようにしている。また、流用を防ぐためには、契約書にそのことを明記したりニ次使用についても話し合うようにして、そういったことにうるさいデザイナーである、という認識を持たせるようにしている。また、トラブル回避という点でもエージェントが仲介に入っている案件でもエージェント任せにせず、可能な限りクライアントとの打ち合わせや説明会などに同席することを心掛けている。

先輩SOHOに聞く

先輩SOHO

いつもの発注と同じ、という意識で、広告デザインを作ってみてから、相応の請求ができるだろうと、思っていたようです。
多くの場合、馴染みのクライアントであったりすると、このようなことになりがちです。

受注内容・報酬の確認をいつするか

コンペと言われた段階で、この仕事に具体的にどの程度関わるのか、詰めておくべきであったと言えます。

通常はコンペに出す制作会社やエージェントなどが、受注できる否かは結果次第であること、その際の制作料の取り扱いはどうなるか、ということをきちんとデザイナーに説明します。その時点で、コンペにかかるコスト面について明確にしておくことが重要です。

受注内容・報酬の確認をどのようにするか(必ず書面? 口約束でもOK?)

様々な苦い経験を経て、受注の際、必ず契約書、もしくは少なくともメールにて、受注内容・報酬を確認し共有することにしました。

メールには証明能力が十分でない、とも言われますがいざという時のために送受信記録を残しておくとよいでしょう。

また、見積書、発注請書を発行すると、さらに確実でしょう。しかし通常の小規模事業主にとって、どうしても制作自体を優先し、この契約内容の確認作業が抜けてしまうことが多いようです。

SOHOは専門的技術を持ったクリエイターであると同時に、事業主。でもどうしても苦手、という方でも、定型パターンを一度確定すれば、汎用できますので、工夫してみましょう。

クライアントの開拓・確保

自らの経験を踏まえて、契約内容を常に自分で把握するよう改善し、それとほぼ同時進行のような形で契約形態も直請を意識してきたようです。

クライアントの開拓は、仕事が評価されて展開してきたことと理解できますが、複線として、方法にこだわらずとも、常に契約内容をきちんと把握してきたことが、デザイン技術への評価にいたる基礎として有効であったのではないかと思われます。

法律家からの助言

法律家

相談者が作成したコンテンツの著作権の帰属についての検討も必要です。商業的なデザインの場合、著作権はクライアントに移転する場合が多いようです。しかし、それは確立された慣習でもなく、かつ、何らの取り決めがなされていないケースが多いと思います。

デザインの流用の問題等

デザイナーの方々においては、自分が保有する著作権という権利に自覚を持って、その権利を守るために、依頼者との間で著作権の帰属について、明確に取り決めを行っておくことが必要です。

SOHO受発注トラブル事例集

第1章「自らの落ち度の度合いが高い場合」

第2章「先方の落ち度の度合いが高い場合」

第3章「自らの強みを単体で生かしている場合」

第4章「自らの強みをコラボレーションで生かしている場合」

付録「SOHO受発注トラブル事例集FAQ」

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